自動車編

事故直後にしなくてはならないこと。(道交法第72条1項)
①直ちに車両などの運転を停止する。
②負傷者を救護する。負傷者がいる場合、すぐに救急車を呼ぶこと。また、可能な範囲で応急措置をする。
③二重事故を防ぐため、危険防止の措置を取る。
④①~③を迅速に済ませた上で、警察へ通報する。
 これを怠ると、死傷事故の場合3年以下の懲役または20万円以下の罰金(道交法第117条)物損事故の場合、1年以下の懲役または10万円以下の罰金(道交法第117条の3)④の措置をしなかった場合、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金(道交法119条1項10号)となる。


自動車事故で誰かを怪我させたり、他人の物を壊したりしたら、その人は「道義的責任」と「法律上の責任」を負うことになります。

*「道義的責任」*

お詫びに行ったり、お見舞いに行ったり、誠意を尽くす事が人としての責任です。
これを果たさないことには何も始まりません。

*「法律上の責任」*

「刑事上の責任」
人に怪我をさせたり死亡させた時は、刑事上の責任を負い「刑罰」を受けることになります。
ほとんどが罰金で済むようですが(10万~50万)、飲酒運転による傷害(致死)罪の場合、かなり厳しい処分が待っています。
「行政上の責任」
運転免許の取消しや停止といった「行政処分」(違反点数の加算)が行われます。

「民事上の責任」
被害者に対して、その被害を補償しなければなりません。
これを「損害賠償責任」といい、自賠責保険や任意保険の対象となるのが、この部分です。
ちなみに、車を運転していて人身事故を起こした場合、自賠法3条と民法709条および715条により、ほとんどのケースにおいて損害賠償責任の問題が発生します。


事故現場でのチェック項目・注意事項   
①先に自分の住所・氏名を確認させるため、免許証・自賠責・車検証を見せて書き写してもらう。
②名刺などで自分の連絡先を・携帯番号などをメモさせる。
③保険会社名・連絡先を教える。
④同様に相手に対しても同じを内容を聞きメモしていきます。

※自分から先に情報を教えるのは、相手がすんなり情報提供をしやすい状況を作るためです。
可能ならば、全ての処理が終わった上で近くのコンビニで、免許証・自賠責・車検証・名刺をコピーしてお互いに交換しておけば安心です。 

※自賠責・車検証を確認するのは、運転者と所有者が違っている場合、もしその運転者に賠償するだけの資金がない場合に、所有者に賠償請求できるケースがあ るためです。

○カメラがあれば、車の被害個所や、きちんと標識・車線・道路幅・交差する道路(交差点の場合)等が映るように現場の写真をとっておきましょう。

 カメラがない場合は、それらをメモし相手と状況確認しておきましょう。
目撃者がいれば、その方にも確認を取っておきます。その状況確認が、その後の示談交渉をする際に生きてきます。

 信号待ちしている車への追突など、明らかに自分に過失がある場合を除いて、たいていの場合でお互いに過失割合が発生します。
 
 そのため現場では絶対に損害賠償について話をしないことと、全額弁償の念書を書くなどの行為は、しないこと。
 保険会社は事故状況に似た過去の判例に基づいて、示談交渉し保険金を支払います。
 もし、その場で全額賠償の念書を書いてしまっても、保険金は全額支払われず、残りは自腹を切って支払わなくてはならなくなることもあります。
 「とにかく保険会社に任せる」の一点張りで突破しましょう。                                                   

具体的な事故処理の流れ                                                                                

1  警察に事故報告。警察は単に事故の受付のみで、過失割合が発生する場合、どちらが悪いかについては言及しません。というよりできません。
  たまに自分のの主観的な意見をいってしまう警官がいますが、現場の警官は、過失割合についてほとんどの場合で、正確な知識がないのが現状です。
  交渉の際、「現場の警官は向こうが全部悪いといっていた。その人に聴けば全て解決する。」なんて主張はとおらないのでご注意を。

2 保険会社へ事故報告。この報告を元に過失割合の概要を決めていきます。

3 複雑な事故で報告するのが不安な場合、保険代理店に協力を求め、代理店から保険会社に報告を入れてもらようにしましょう。

4  保険会社はお客様から保険料をもらってくる営業と、保険金を支払う損害調査部はまったく別の組織で動いています。
 基本的に保険料をもらうコトには積極的ですが、保険金を払う事には消極的・・・。
またいくら自社の契約者でも、公平性を期す意味で、契約者の一方的な味方では有りえません。
 そのため保険会社を動かしていくには、専門知識・ノウハウのある代理店にきちんと事実を伝え、動いてもらう必要があります。
 代理店に保険会社と渡り合うだけの専門知識・ノウハウがない場合、保険会社の言いなりとなってしまい、自分の主張に対して保険会社を動かすことは難しくなります。 その場合、知識のある第三者(弁護士、紛争処理センターなど)に介入してもらうのがよいでしょう。

5 当事者は、自分の主張をきちんと主張しなくてはいけません。
 自分の意に反する場合は、なぜそうならなかったかを保険会社(又は代理店に)説明をもとめるべきです。

6 報告を受けた保険会社は通常アジャスターと呼ばれる見積もり担当者が相手の損害確認を行います。
  アジャスターと修理工場両者立ち会いのもと、事故とは関係のない修理箇所の混入を避けるため、損害箇所の特定の上、修理工場と実際に掛かる修理費用の協定を行います。

7 双方の保険会社(損害調査部)が当事者の意見や見積もりをもとに最終過失割合を決定します。
  基本過失割合は当事者の報告をもとに、過去に行われた裁判の判例を参考に対人・対物ともに過失割合を決定します。                                                                                

8 交渉が成立すれば示談書、もしくは念書(軽微な事故の場合、電話により省略することもあります。)を作成し、示談となります。
                                                                

【番外】
 損害金額が多額になり、双方の意見が食い違っている場合、保険会社はリサーチ(事故鑑定)を入れる場合があります。そのリサーチによって事故現場を調査し、正確な事故状況を把握していきます。
 
 リサーチ報告でも双方当事者の意見が合わなければ、弁護士を入れての民事訴訟(調停)となります。
 当事者に委任された弁護士は当事者の指示に従い訴訟(調停)を行います。
 また弁護士に事故の経緯・主張・損害額が正確に伝わってない場合、結果は全く変わってくるため、弁護士と密なコミュニケーションを取っておくことが必要です。

 以上、複雑な事故処理の場合の概略です。
 示談に至るまでには、法律上保険会社が介入出来ない様々な事項が発生しますので、処理までにある程度の期間が必要となります。                                                          

 また、加入判断を保険会社名で選んでも、安心できるというわけにはいきません。保険会社は数万人規模の従業員を抱えています。社員は約3~4年ごと転勤し、担当は どんどん入れ替わります。
お客様の専属の担当者がお客様の立場に立って、あらゆる方法を模索しながら解決に導いていくことが代理店業務の根幹です。
 

 

労災事故編

通勤途上・就業中の労災事故に備えて。
 経営を揺るがす傷害事故といえば、従業員の死傷事故。
会社は重大事故がおきると、労働基準法の賠償責任だけでなく、民法上の使用者責任も問われます。
 一般的に労災保険の補償額は、自動車の自賠責に比べると圧倒的に少なく、使用者責任を問われた場合、高額な賠償金支出を余儀なくされることもあります。

 その場合、何も準備がされていなければ、会社の経営に危機的なダメージを与えるだけでなく、従業員の家族から訴訟を起こされることになります。
                                              そのため、最近では労災のほかに、割安で加入でき労災の認定とは別に支払われる、労災の上乗せ保険を採用している会社がかなり増えてきています。                                     

 しかし、付保状態を見ていると、死亡・高度障害300~500万円程度の生命保険や、労災の上乗せ傷害保険でも、死亡・後遺障害800万円・入院5,000円・通院3,000円というような加入金額の設定が一般的なようです。
 労災事故が発生した場合、いちばんお金が掛かるケースは後遺障害。
 
入院保険金の支払い限度は一般的に180日が限度、通院の場合は90日。そうすると、入院で最大90万円・通院で27万円の保険金。                            なんとか経費で捻出できる金額ではないでしょうか。 
 
 しかし、支払う保険料の中で、入通院は結構比率を占めています。
 この部分を死亡・後遺障害の補償にまわし、 高額な死亡・後遺障害補償を準備してあげることが、従業員にとっても会社にとっても、安心を確保するための方法です。                           

 また、労災や労災上乗せ保険などは就業中、もしくは通・退勤の勤務地から自宅までの妥当なルート上で起こった事故を対象としています。
 たとえば、
「渋谷にある会社から北千住の自宅に帰る途中、池袋で映画を見た。」
 その場合、池袋から自宅までに起こった事故は支払われません。
ほかに、得意先を接待中の事故。運動会など、休日に会社の行事に参加中のケガ(強制参加で欠席すると欠勤扱いになる場合は別。)などは対象外となります。

業務上災害補償保険の請求について

○一般的な傷害保険では、治療がすべて完了した後に保険会社に対して請求を起こす形になります。
ただし、一般的な傷害保険では事故の日から180日までが、支払いの対象期間となります。よって、事故から180日経過した場合は、早めに請求しましょう。
○入通院で請求金額が10万円以下であれば、入通院した日付をメモしておけば、領収証と診察券のコピーだけで請求が可能です。 また病院ではなく、整骨院などの通院は減額される可能性があるので注意してください。 
○医療費用保険金の特約がついている場合、治療費等、病院へ支払った費用の領収証などは、なくさずに取っておきましょう。

 
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