労災と様式

労災の給付を受けるためには、一定の書類を用意し、労働基準監督署などに提出する必要があります。

たとえば「療養補償給付たる療養の給付請求書」は、5号様式と呼ばれていて、これを労災病院や労災指定病院に提出することで、労働災害に遭ってしまった人は、無料で治療を受けることができるようになります。

この場合、院外薬局で薬を受け取るならば、院外薬局(労災指定薬局に限る)に「5号様式」を提出することで、お薬を無料で受け取ることができます。

ただし「労働者が怪我をした、倒れた」といった場合に、すぐに5号様式を用意することは、ほとんどの場合できませんので、病院や薬局に「労災です」と申し出ておき、後に5号様式を提出するという形が現実的です。

様式の準備を待っていたら、労働者の生命に関わることもありますので、注意が必要です。

 

労災防止のために

労災は「できるだけ防止する」「それでも起こってしまった場合に備えて、充分な保障を得られる保険に加入しておく」という考えが必要です。

労災防止のためには、各地の労働災害防止協会が安全衛生に関する講習会などを行ったり、一定の時期になるとキャンペーンを行ったりして、労災防止意識を高める工夫をしています。

また事業主の方の中にも、講師を招いての研修・セミナーなどを開催する意識が高まっています。

ただ「理念が立派なだけではいけない」「現場の状況・現場のニーズに即した労災防止策を講じなければ、意味がない」と言えます。

建設業の例で言えば「セミナーなどは積極的に行っていたとしても、現実にはあまりにも短納期すぎる仕事を、労働者が立て続けにこなさなければならない」というような状況が続けば、労災防止など実現できませんので、注意が必要です。

 

労災防止協会

労働災害防止協会(労災防止協会)とは、事業主が積極的に労災防止に取り組むという意識を育てたり、職場の安全衛生の向上を図ったりすることで、労災の絶滅を目指すという目的で設立された協会です。

一定の時期には労災防止のためのキャペーン活動を協会として行っていたり、安全衛生セミナー・研修会の実施や、専門家による職場の安全衛生状態の診断など、様々な活動を行い、サービスを提供しているのが労災防止協会です。

労災保険に加入することも大切ですが、できれば労災が起こらないようにすることも大事です。

労災が少ない状態が続けば、保険会社によっては保険料の計算が、加入者の有利になるというケースもあります。

労災防止協会の存在があることで、労災防止の考えが広まっていくことが、協会の狙いなのです。

 

労災と保険

労災に遭った労働者は、事業主によって「労災である」ことを証明してもらえれば、政府労災からの給付を受けることができます。

ただ、政府労災の保険は「必要最低限の部分」しか給付が行われないと考えて良く、ケガの治療が非常に長引いたり、元の職場に復帰できないようなケガ、病気を負ってしまうことが考えられる職種では、事業主が民間の労災保険に加入するケースもあります。

民間の労災保険には「政府労災の上乗せ保険」として機能するものと、傷害保険をベースに誕生した任意労災と呼ばれるものとがあります。

どちらの保険にもメリット・デメリットがありますので、加入を考える際には、中小企業診断士やファイナンシャルプランナー、社会保険労務士などの専門家に相談すると良いでしょう。

 

労災保険の申請

労働災害によるケガ、病気の治療を受ける場合には「労災病院、労災指定病院にかかった場合には、申請先はその病院」「それ以外の病院にかかった場合には、申請先は労働基準監督署」となります。

労災保険の申請は「手続きがわかりにくいから、とりあえず健康保険を使う」「ケガや病気の状態が悪く、書類を用意できないから、健康保険を使ってしまう」というケースがありますが、これは避けましょう。

まずは「病院に労災であることを告げる」「書類はできるだけ速やかに、用意する」という順序が現実的です。

労災保険の申請に関して、最も頼りになるのは「社内の労務管理を担当している人」です。

どうしても、疑問が解決できない・労務管理の担当者と話がかみ合わないなどの場合には、各地の労働基準監督署、労働局、法テラス、市区町村の相談窓口などを利用しましょう。

 

労災の統計


労災の統計としては、厚生労働省が運営する「職場のあんぜんサイト」の労働災害統計がもっともよく知られているでしょう。

単に数値を合計した統計というだけではなく「どのような状況で労災が発生したのか?」「重大災害や死亡災害に限っての発生状況はどうだったのか?」などがエクセルファイルで閲覧できるようになっています。

各地の労働災害防止協会ホームページでも労災の統計情報を公開していますし、業種ごとの労働災害防止協会のホームページでも、業種ごとの労災に関する統計が見られるようになっています。

業種ごとに「ケガ、死亡などが多いのか?」「心の病が多いのか?」といった統計上の特徴があることも知られつつあり、「長年にわたって統計が取られてきたことに意味がある」ことが、理解できます。

 

労災事例集

労災事例集で、見やすくて大変便利なのは「厚生労働省 職場のあんぜんサイト」のものです。

業種、事故の型、起因物などで絞り込むことができ、労災事例集が非常に見やすい状況になっています。

業種も「建設業」「運輸交通業」「貨物取扱業」などかなり細かく分けられています。

「その他の事業」というものがあり、試しにこの条件で絞り込んでみると、警備員や交通誘導員の事故、植木の枝切り作業中の事故などが紹介されており、事例も非常に具体的です。

事故の型としては「墜落、転落、……、爆発、破裂、火災……」など、かなり細かく分類が行われています。

こういった事故の事例集から「どのようにすれば、労災事故が防止できるのか?」を読み取り、労働環境の改善に活かしていきたいですね。

 

労災事故とは?

業務災害・通勤災害をまとめて労災事故と呼ぶことが多いです。

労災事故のうち業務災害と認められるかどうかは「業務と災害の因果関係(業務起因性)」と「業務と傷病の因果関係(業務遂行性)」が認められるかどうかにかかってきます。

「事業主の支配下かつ管理下にあって業務に従事している時の事故」というのは非常にわかりやすいのですが、それ以外でも、休憩時間や出張中の場合も業務災害にあたると認められるようになりました。

通勤災害は「通勤中に遭ってしまった事故」であり、「通勤」とは「労働者が就業に関し住居と職場との間を合理的な経路及び方法により往復すること」と定義されています。

通勤途中に日用品を買うといった理由ではなく、「会社の帰りに映画を観に行って事故に遭った」などのケースは、通勤災害とは認められません。

 

労災の給付を受けるとき

労災の給付を受けるときは「基本的に労働基準監督署に対して、手続きを行う」というケースがほとんどです。

また「事業主によって労災であることを証明してもらう」「医療機関に給付を受けることの証明をしてもらう」といった流れがあります。

たとえば療養が必要となった場合には「労災病院や労災指定病院等において、無料で治療を受ける=療養の給付」と、「労災指定病院以外の病院等で療養し、その費用全額をいったん支払い、その相当額の支給を受ける=療養の費用の支給」という方法があります。

これらの方法について、ケガや病気で大変なときに聞かされても、混乱が深まるだけですので、できるだけ健康で精神的に余裕のあるときに、知るようにしましょう。

 

労災について

労災について調べたければ「労災保険情報センター」や「職場のあんぜんサイト(厚生労働省運営)」などが参考になるでしょう。

労災については「自分が労災に遭うまで、関心を持ったこともなく、知識もなかった」というケースが意外に多いものです。

しかしながら、労災に遭って気が動転しているときには「どのようにして給付を受けたらいいのか?」「そもそも、誰に相談すればいいのか?」といったことが、わからなくなるケースのほうが多いのです。

健康で働けている間に、労災について知っておき、仕組みを活用できるようにしておきましょう。

また「健康保険証をとりあえず使う」というのは、決して良いことではなく、後のトラブルになりますので、やめておきましょう。

 
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